IPE研究会 次回の会合
 
2018年2月18日(日)15:00-18:00

場所
東北大学 東京サイト
東京都中央区日本橋本町2-3-11
日本橋ライフサイエンスビルディング912号室


 
 

発表1
「保護する責任」規範の逆機能
――シリア内戦における「保護する責任」の失敗とオバマ政権――

草野大希
埼玉大学 教養学部 准教授


発表2
同盟によるバランシング機能の弛緩
――北朝鮮と台湾を事例として――

増永 真
元文京学院大学国際連携教育プログラム講師


 
 

発表1要旨
 21世紀に入り「保護する責任(R2P)」という規範を
創出した国際社会は、政府軍による市民虐殺が懸念された
リビアに対してはR2Pの下で軍事介入を実施したが、
同時期に進行したシリアの人道危機に対しては、その
「責任」を果たしたとは言い難い。
 本稿の問いは、なぜ国際社会はシリアに対してR2Pを
果たそうとしなかったのかである。本稿は、国際社会に
おける最も有力な介入主体としての米国(オバマ政権)の
決定に焦点を当て、この問いに答える。
 先行研究が強調する「不介入」要因は、内向き志向の
米世論やシリアの地政学的・戦略的条件に起因する介入の
コストやリスクの高さ(Pape)である。これに対して本稿は、
シリア内戦におけるR2P「規範」の「逆機能(dysfunction)」
に着目する。すなわち、シリア内戦においてはR2P規範が
米国の軍事介入を「促進」ではなく「抑制」する方向に
働き、保護されるべき多くの人々が保護されない状況が
もたらされた可能性を検討する。
具体的には、(1) R2P規範に含まれる国連安保理決議重視の
「弊害」、(2) R2P規範の「濫用」に伴う「規範として」の
正当性の低下、(3) R2P規範がもたらす「モラル・ハザード」
による対シリア軍事介入の困難性、を明らかにする。
 規範が国家の行動(介入)の動機となる点を強調して
きた従来のコンストラクティビズム研究(Finnemore)とは
異なり、規範が、意図されざる結果として、それが予定する
行動(結果)とは逆の行動(結果)を導いてしまう「逆機能」
に着目する本稿は、規範研究に新たな視座をもたらすもの
と言えよう。


発表2要旨
 ある国が、他国の脅威に直面した場合、「強い国」との
同盟関係によって、集団安全保障体制を構築し、脅威を
もたらす国に対抗して、存続を図る場合がある。こうした
安全保障政策上の戦略は、「脅威の均衡(同盟によるバラン
シング)」と呼ばれる。しかし、「強い国」の政策変更の結果、
「同盟によるバランシング」の機能が低下した場合、それを
引き続き必要としている国はどのように行動するのだろうか。
同盟国の中国及びソ連(1991年以降ロシア)が脅威である
韓国と外交関係を樹立した北朝鮮、および、同盟国の米国
が脅威である中国と国交を樹立した台湾は、上記の問いを
明らかにする上で格好の事例である。本稿は、北朝鮮と台湾
を事例として、「同盟によるバランシング」の機能を享受
していた両国が、これが弛緩した後、どのように行動した
のか。そして、それぞれの行動はいかなる要因によって規定
されていたのかを両国の安全保障政策のみならず、旧同盟国
の対応、さらには、両国の経済政策にも着目して、それらの
共通性と対称性を示しながら明らかにする。「同盟」や
「勢力均衡」、「バランシング」、あるいは「同盟国に見捨てら
れる恐怖」などに関する研究は多数あるが、「同盟国に見捨て
られた国の行動」に関する理論研究は管見の限り見当たらない。
本稿の目的は、この研究の空白を埋めるところにある。




     
 

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